第10話 秘力第10話 秘力レッドアイ研究所から古都に向けて侵攻する部隊。 信仰者、所員の数が合わせて80、警備兵50、警備犬が25とかなりの大部隊である。 その中で、一番後ろから数頭の『イフリィト』に引かれて進んでいく輸送車があった。 その中には、隊長格らしい1人の戦士と、3人の少年が待機していた。 金髪で長身の、どこか高貴な雰囲気さえ感じさせる容貌の少年は、身の丈ほどもある巨大な大筒を丁寧に磨いている。 やんちゃ坊主のような顔立ちの、赤毛の少年も、自分の持つ巨大な湾曲した鎌に見とれている。 もう1人のおとなしそうな色白の少年は、両手につけた巨大な鉤爪をだらりと下げながら、横になっていた。 レーシェル・レジスト、ラベル・グラッツ、ミーシャ・リーズ。 彼等はこちらレッドアイ軍の、いわば秘蔵っ子であった。 3人とも、互いの存在に注意を払う様子はない。 やがて、それらの少年を乗せた輸送車は、古都ブルンネンシュティグ東門へとさしかかった。 古都ブルンネンシュティグは、大騒ぎだった。 あちこちでギルドマスター達が、市民の避難や、迎撃部隊の指導をするのにはげしく怒鳴りあっている。 「・・・市民の皆さんはこちらに!さぁ早く!」 「こら、そこの奴!どこの所属だ!?」 「武器の手入れを怠るなよ!1ミリの刃こぼれが死を招くと思え!」 その様子を、ロレッタ達は驚愕の目で見渡していた。 「・・・レッドアイにまだ残党がいたってことですかね・・・」 その言葉に付け加えるかのように、レヴァルが言う。 「・・・噂では、かなりの大戦力だそうだ。」 ラムサスが多少の疑問の表情を浮かべながら、言い放つ。 「だけどよぉ、そんなに大戦力って・・・あっちの兵士どもも、人間だろ? ファントムの命令だけで、そんなに動くものかね?・・・現に、奴等も死にたくはないだろうしよ。」 言っている最中に、ラムサスはキャベルの顔を思い浮かべる。 だが、レヴァルはそれを否定したような事を言った。 「そうなれれば、こんな戦争、起こらないさ・・・現に、そうならないから、こうして来るんだ・・・今は戦うしかない。生き残りたいなら、なおさらだ!」 その言葉で、その部屋にいた人全員が勇気付けられる。 「・・・レヴァルさんの言う通りです。生きたいから、戦う。ただ、それだけの単純なことですよね。」 「・・・その通りだ。」 レヴァルが、ロレッタの方を見、こう言った。 「・・・君も、その大事な人が生きていると信じているのなら・・・生きてそいつに会うため、戦って生き残るんだ。」 その言葉に、ロレッタは強く勇気付けられた。 |